- 漆芸
キュウ漆線文食籠「遙」
- きゅうしつせんもんじきろう「はるか」
- 荒川 文彦
- あらかわふみひこ
- 第52回日本伝統工芸展(平成17年度)
文部科学大臣賞
- 受賞総評檜材を簡潔で端整な器形に挽き上げ、和紙貼を施したのち、全面に漆を塗布した合口造(あいくちづく)りの食籠。欅製溜塗(ためぬり)の懸子(かけご)を伴う。特筆されるのは、潤朱(うるみ)漆と黒漆を暈かしの手法を交えて塗り分け、その蓋縁と合口部の漆黒の地に装着した精妙な金属線であろう。蓋縁を際立たせている圏線は金粉と銀線。胴部を箍(たが)状に巻くのは二条の銀線である。蓋表の朱塗部分を太陽に譬えれば、圏線は惑星の軌道、白銀に輝く鋲頭は壮大な宇宙を回帰する惑星のさまを彷彿させてくれる。「遙」の器名とあいまって、作者の機知に富んだ発想がしのばれるところである。(河田貞)