技法

蒟醤

受賞総評

生垣に咲く蔓日日草の青緑色の花が、初夏の風にゆらぐさまに着想を得たという。蓋から短側面にかけて、明るい紫と青紫色による五弁の花を交互に配し、側面にはデフォルメした菱四弁花文を連続させる。これらを蒟醤であらわすが、四弁花文の中心に点彫りで明るい紫色を二度埋めし、そのほのかな明るさが黒と青紫の色彩を際立たせている。清楚で瑞々しい花の表現とリズミカルな連続文の妙はもとより、黒漆と花文との色調がなごみ合い、気品のある作品となった。（記高橋隆博）