- 木竹工
栃杢造食籠
- とちもくづくりじきろう
- 中嶋 虎男
- なかじまとらお
- 第14回伝統工芸木竹展(平成25年度)
朝日新聞社賞
- 受賞総評程よい縮杢(ちぢみもく)の栃材を用い挽物技法で制作した食籠=菓子器である。あたかも無限に広がるような曲面を、金線象嵌で切り取って甲盛とする形態は、材本来の白い輝きを秘めた黒漆仕上げによって一層引き締まり、見事な作品となった。美術としての現代の工芸はその力点を、用途を離れそれ自体の美に置くことも多い。しかしこの食籠には、ほの暗い茶室で蓋を開けた時、漆黒の器に浮かび上がる、例えば白い薯蕷饅頭の美しさを楽しみたくさせる力がある。これこそ工芸にのみ許される喜びである。(須田賢司)