- 木竹工
栃杢飾箱
- 伊藤 渡
- いとうわたる
- 第33回東海伝統工芸展(平成14年度)
日本工芸会賞
- 受賞総評栃“縮木”。時に自然は、斯くも美しい素材を作り手に授ける。
30年前、この木と出会い、その“馨”に耳を傾け続けた作者は、自らの思いを飾り棚という形で素材に委ねた。
心地よいリズムと変化に富んだ杢を左右対称に配し、広がりと安定感を与え、中央の空間は静寂を感じさせる。点睛となるべき取っ手には黒柿を用い、全体を引き締めている。
ともすれば饒舌になりすぎる素材だが、拭漆の深い色合いと気品ある艶が、格調高い作品に仕上げており、木と漆を知り尽くした作者の卓越した技量が窺える。
永年に亘る作者の修練が、自らの思いと天恵なる素材を美しく調和させた秀作だ。