技法

乾漆、蒟醤

受賞総評

明るい陽が水面に射して揺らいでいる情景である。その穏やかな心象風景に心のやすらぎを重ねた。技法は、麻布の乾漆で素地を造り、黒漆塗面に緑漆を埋め込んで研ぎ出した蒟醤である。特徴的な緑色の濃淡は、父・省三から伝授された「たたき塗」の技法で柔らかく表現した。初受賞となる本作品は、花を生けても活けなくても使えるよう工夫した形態である。緑漆のみで描いたシンプルなデザインに機能が調和している。北岡の若々しい造形感覚は、江戸時代より続く高松漆器に新しい息吹を感じさせる。（記：内田篤呉）