活動報告
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2008年10月21日(火)1日目
林駒夫先生自宅に集合し、研修内容の説明を受け、京都東本願寺別邸渉成園にて結髪師南登美子先生による舞妓の結髪、化粧、着付け実演見学。その後、林先生自宅工房で舞妓の雛形カツラを見ながら頭部を桐材にて彫刻し、桐塑(生麩粉にお湯を加え、粘った正麩糊と桐粉をまぜてつなぎに和紙をちぎり粘りを出したもの)を部分的に付け鼻や耳、髪の成形をする。舞妓の髪はカツラではなく地毛で結ってあるので、生え際の違いや根の位置の高さに違いがあり、思っていたよりかなり低い位置に根が立てられていた。また髪結いの人により独特の根を立てる工夫をしていると南先生より講義を受けた。
渉成園にて南先生の着付け
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2008年10月22日(水)2日目
時代祭の当日、京都御苑において各時代祭の女人達の風俗を林先生の解説により衣装髪型等を見学。工房に戻り木芯桐塑による舞妓の季節別6種の姿を制作。大まかな動きを桐材で彫刻して細かな部分を桐塑で成形。襟、袖、裾などは張り子紙で作り、その上を引きの強い石州紙などで張る。6人それぞれが見世出し、都をどり、桜、祇園祭、時雨、雪と6つの季節を舞妓の姿で表現する。
時代祭の女人見学
雛形カツラを参考に頭制作
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2008年11月30日(日)3日目
南登美子先生宅にて舞妓の髪型、先笄(舞妓が襟替え前の一週間だけに結う髪型)の実技見学。その後、滋賀県守山市の佐川美術館に行き「佐藤忠良展」を見て、人体骨格の勉強会、そして楽吉左衛門館を見学。
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2008年12月1日(月)4日目
南座にて歌舞伎の「十二月顔見世興行」の祇園舞妓総見に同席。その後、林先生自宅工房に戻り各自進めて来た桐塑下地を見て頂き、次に地塗り作業に入る。胡粉塗り前の下地作り、桐塑の生地に石州紙等を水切り、もしくは手でちぎり毛羽立ちを重ねながら張り込む。地塗り胡粉はまず乳鉢に胡粉と溶かした膠を加え、耳たぶくらいの柔らかさになるまで入れ、団子にして乳鉢に叩き付け、手で棒状になるように練る。その固まりの胡粉を手ですりあわせ細い麺のように伸ばし乳鉢に落として行き、そこにお湯を加え胡粉を溶いて行く。出来た地塗り胡粉を刷毛で桐塑の生地に摺り込むように塗り、生地締めをして、乾いては塗りを繰り返して地を塗り上げる。
胴体の制作
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2008年12月2日(火)5日目
前日、胡粉を塗り重ね自然乾燥した作品をサンドペーパーで粗磨きをし、埋まっている部分を彫刻刀で彫り出して行く。ほぼ形が決まった時点で襟や袖、裾、だらりの帯などを張り子紙で作り加え、成形した上に石州半紙を張り込む。各々が初めて使う材料と技術に戸惑いながらも、先生の指導のもと初年度の研修は終了した。
紙張り文様の制作
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2009年4月1日(水)1日目
初年度に続き、人形に和紙で地張りや木目込みの下拵えをし、同時に団扇や扇子、髪飾り等、各自の人形にあった小道具や先笄や割しのぶ、お福、勝山、奴島田に付ける簪や櫛を、季節毎の約束に則り小さく和紙や金箔を使い作った。午後にパナソニック社迎賓館真々庵見学。夕刻に先生の工房に戻り再度、簪の試作を見ながら先生に批評をして頂き調整を行った。
文様紙の下拵え
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2009年4月2日(木)2日目
粗磨きした胡粉塗りの人形を中塗り、置き上げ胡粉で置き上げをし、乾燥をするその間を利用して祇園歌舞練場に行き「都をどり」の見学、踊り子に楽屋口まで出て来てもらい姿を間近に見て取材した。工房に戻り乾燥の済んだ後の人形を磨き上げ、彫刻刀で「さらえ」まで進めた。
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2009年5月15日(金)3日目
襟付けや袖回りの貼り込み。ここは極めて重要なところで着物の薄さや柔らかさ、そして刺繍や金襴の豪華さをを表現する上で、手際の良さが左右するところである。
実際の半襟や帯の豪華な質感を省くことなく作業する事でより良いものに仕上がるのである。その後急ぎ先生宅から近くの京都御苑に向かい、京都三大祭の一つ葵祭を見学。工房に戻り、未だ途中だが作品を撮影し、ついで敷台の採寸をした。頭、襟の張り込み
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2009年7月16日(木)4日目
京都祇園祭。舞妓が結う祭り用の頭「勝山」や絽や紗の夏の正装を見学。先生宅に戻り最終の仕上げに入り、衣装、襟、帯付属品等の最終調整をした。
祇園、舞妓の姿
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2009年7月17日(金)5日目
最終日、開眼をして簪、櫛、団扇等の付属品を取り付け敷台に載せ完成である。作品を先生宅の部屋に飾り、それぞれ林先生から講評を受けた。
二年間に及ぶ研修会により様々な事を学んだが、それらの日々が今後の作品に大きな進化をもたらすであろう。伝統の力の大切さを感じつつ研修を終えた。完成
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平成20年より人間国宝の林駒夫先生の自宅にて6名による研修が秋の京都で始まりました。
舞妓の人形を桐塑人形の技法を使い6名が季節、舞妓の約束事など違う題目で作り上げるという研修内容です。京都に住んでおられる林先生による舞妓の説明、また着付け、南登美子先生による髪結、着つけ、化粧の実演、さらに4回の研修を季節に合わせて京都の名所や祭、舞妓の舞、京の味覚と、普通見ることの出来ない本物、最高のものを見せて頂きました。沢山体験する事により作る時に題目の内容、思い入れがさらに深く、濃くなり人形の持つ力がつよくなりました。
技術は普段、各自違う技法で作っていますが、桐塑、紙などの作り方、使い方、始めて見る素材の特性や工芸展で見る先生の作品の作り方の解らない点など惜しみなく教えて頂きました。それにより普段使っている土・彩色の長所・短所が見え、次に作る自分らしい人形が仕上がればと楽しみになり、これから作品を見る時に見方、考え方、心構え、どの様に表すかなど、必ず今までの自分と違うと思います。そこが今回、研修で先生に教えて頂いた事への恩返しになる様に作って行こうと思いました。
最後に先生や沢山の方々の準備や心遣いにより、この研修を受講できました事を研修生6名、心より感謝しています。誠にありがとうございました。
執筆者:研修会助手 中村 信喬(人形部会)
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