活動報告
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2005年4月25日(月)1日目
愛知県陶磁資料館において開催中の特別展「桃山陶の華麗な世界」展を見学。井上喜久男主任学芸員の説明及び、講師の話を聞きながら見学する。見学後、講師より今回の研修会についての大まかな流れの説明を受ける。
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2005年10月26日(水)2日目
京都市考古資料館および埋蔵文化財研究所において永田信一館長、吉崎伸氏(調査課長)、中村敦氏(資料係長)らの説明のもと京都市内において出土した桃山陶の陶片を見学。たくさんの陶片を手にするという幸運に恵まれた。
桃山陶の出土品を見学する(京都市考古資料館・埋蔵文化財研究所)
出土品は消費地の発掘なので完器が多い(京都市考古資料館・埋蔵文化財研究所)
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2005年11月14日(月)3日目
東京国立博物館において研修会。日本の代表的なやきものである鼠志野鶺鴒文鉢、志野茶碗 銘「振袖」、また中国の代表的やきものである南宋官窯青磁輪花鉢、青磁茶碗銘「馬蝗絆」を鑑賞する。
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2005年11月29日(火)4日目
土岐市美濃陶磁歴史館学芸員の加藤真司先生の案内で高根山古窯群、久尻元屋敷窯跡を見学する。その後土岐市美濃陶磁歴史館に移動、展示作品を見学の後、前回に引き続きたいへん多くの陶片に触れる機会に恵まれた。
高根山古窯跡にある大窯のレプリカを見学する
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2006年4月9日(日)1日目
昨年行われた研修会の感想文をそれぞれ持ち寄り、これまでの研修会で何を感じたのか、これからの研修会で何を学びたいのかをそれぞれが発表した。これらを踏まえて講師より今後の研修会の進め方についての説明があり、そして今回の研修会で向付を制作するに至った経緯についての説明を受ける。その後各自それぞれが制作する向付の形を同じ形が重ならないよう、話し合いながら決めた。
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2006年6月22日(木)2日目
向付の制作に取りかかる。茶懐石に使用する向付ということで、その大きさに十分注意するようにとの講師からの説明を聞いてから、先の話し合いでそれぞれが決めた向付の形の土型を制作し始める。土のかたまりから収縮具合を考えながら形作っていく。
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2006年9月12日(火)3日目
前回制作した土型をもとに、向付を型起こしする。原型の上に蚊帳を被せ、その上にタタラ土を被せて、指で押さえながら向付本体を形作っていく。出来上がったら型から取り出す。その後、タタラ板で高さを調整して、縁の余分な土を切り取ることになる。
土型に蚊帳の切れ端を被せて、その上にタタラをのせて向付を作る(土岐市美濃焼伝統産業会館)
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2006年9月13日(水)4日目
昨日に引き続き向付の型起こしをする。型から起こして縁の高さを揃えたものの中から、適当な硬さになったものに足を付け、カンナで表面を仕上げる。講師からは、足の付け方、表面の仕上げ方など、どうしたら力強くなるのかよく考えるようにとの指導があった。
土型から外した向付を、かたちが崩れないように粘土(ヨリ)を支う
土型から外した向付を仕上げる
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2006年10月26日(木)5日目
前回の研修会で1部持ち帰った作品が焼き上がったので、講師宅において講評会を行う。志野釉が掛かり試験焼成されたそれぞれの作品を前にして、受講生ひとりひとり意見を述べ合い、講師の講評を聞くという形で行われた。向付そのものの形、また茶懐石で使う向付ということで、実際に折敷の上に載せてみて、飯碗、汁碗とのバランスなどからどの大きさがちょうどよいのかなど、多くのことが話し合われた。この話し合いの結果、本来なら、次回の研修会は絵付けと釉薬掛けであったのだが、皆が現状に満足しないで自発的にもう1度作り直しもっとよい作品を作りたいということで一致した。このため次回の研修会はもう1度作り直すということを決めて終わる。
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2006年11月22日(水)6日目
前回の反省点をもとに大きさ等、それぞれ手直しを加えて持ち寄った土型をもとに、再度型起こしに挑戦する。型起こしの工程自体は前回と全く同じであるが、各自が反省点をもとに講師の指導を仰ぎながら手直しを加えて少しでもよい作品にしようとする姿勢が強く感じられた研修会であった。出来上がった作品はそれぞれが持ち帰り、次回研修会までに、各自で素焼きを焼いて持ち寄ることになった。
仕上がった向付
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2007年1月25日(木)1日目
素焼きの終わった素地にそれぞれ鬼板による絵付け、化粧掛けを行う。化粧掛けを行った素地についてはもう一度各自素焼きを焼いて持ち寄ることとなる。
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2007年4月19日(木)2日目
志野釉を釉掛けする。釉掛けが終わったら、足の部分の釉薬をスポンジで落として、足が接着してしまわないように道具土で浮かした上でサヤの中に入れ窯入れをした。この後、5日間の本焼成となる。
向付の釉掛け(鈴木藏氏アトリエ)
窯から出した向付(鈴木藏氏アトリエ)
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2007年4月30日(月)3日目
窯出しを行う。焼成後の向付を、道具土をとるなど仕上げの作業を行う。完成した作品を前にして講師より講評を聞く。
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2007年5月20日(日)4日目
完成した器を料理店に持ち寄り、実際に懐石の器として使用した。折敷の上に飯碗、汁碗とともに並ぶことによって懐石としての向付の大きさを再確認する。改めて講師からのアドバイスを聞き、また、受講生それぞれがこの研修会をとおして勉強になったこと、感じたことを話し合い終了した(第3年次は皆で相談のもと自主参加で行いました)。
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初年度は志野という焼物を見聞・考察し、次年度はそれを基に作品を作りますとの事でした。最初に愛知県陶磁資料館で開催中の「桃山陶の華麗な世界展」を鑑賞し、志野を初めとする数々の桃山陶の優品、大陸より招来された中国陶を中心とするその周辺の焼物等々、桃山時代の茶陶に係る焼物の全体像を俯瞰する様に研修会は始まりました。当時の消費地である京都の町屋からの出土品、制作地である美濃の古窯跡とその周辺からの出土した数百点に上る陶片の調査を経て、東京国立博物館での志野、中国青磁の名品、各2点に直接手を触れ学習・体感し、名品の技巧を超えて持つ魅力、その創作背景にある物にまで講義の内容は及びました。2年次の制作に当っては前年の研修で一番多く見た物、日常使われていた器等の中で、技術の伝承という視点から勘案すると「向付」が一番適当でしょうとの御教示があり、出土品の図録から各自が好みの器を選び制作する事になりました。いずれの器も粗形を型で作る為、土型作りから始めました。土型の収縮、成形品の乾燥収縮、本焼成時の収縮、そしてたっぷりと施釉される志野釉とのバランスには各自悩まされての作陶でした。しかし、先生には受講生の制作状況を時折能く見ていただき、器形の大きさから細かな点に至るまで演繹的に丁寧に御指導を賜りました。
成形を終えた作品は先生自らの手で素焼きから本焼成に至るまで御世話いただきました。
そしてその後各自の焼成された完成品を、向付が実際に使用される折敷に置き、姿・形に至るまで論評をいただきました。その結果、研修期間の終了後も受講生の自発的制作の続行をお許しいただき、会期終了後も研鑽研修を続ける事になりました。
今回の研修会では、想念を具現化するのに形は勿論の事、それを形成する素材を見極め使い切る眼力、先生の御言葉によくある「不易流行」等々、そして伝統工芸界に於ける伝統と独創性の係りの難しさ等、貴重な啓示を数多くいただく契機となりました。
受講生一同、鈴木先生には心より感謝申し上げる次第です。
執筆者:研修会助手 鈴木 徹(陶芸部会)
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