活動報告
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2004年11月3日(水)1日目
図面の制作と木画の型づくりを中心に行った。柾合せの基本形と別に"曲線に寄せる"中川先生のオリジナルの技法を学ぶ。
柾合せの展開には四角形、六角形、八角形といった基本になるものがあり、そのほかには曲線に寄せる中川技法とも呼ぶべきオリジナルの技法の説明があった。
それは桶の工法に正直型と言われる木型を使う技法があり、曲線も自由自在に寄木することが可能であることを作品に添って説明していただいた。寄せ木の説明
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2004年11月4日(木)2日目
支給されたボードにボール紙を敷き三角定規、50センチものさしを使用し試案に取りかかる。
各自の個性が出たものが多く、先生の長年の経験からアドバイスにより、より完成度の高いものになる。図案制作
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2004年11月5日(金)3日目
アクリルを使用し図案から切削角度を写しとって、切り出しナイフを使用し定規にそって正確にカットし、角度の正確さが生命線のため微調整する。
今回支給して頂いた神代杉の柾目板にカットしたアクリル型をあてがい、木目や色のどの部分を使用するかを決める(木取り作業)。
木の場合、同じ木目が2つとないので作品に合わせて木目(年輪)の荒いところや細かいところ、微妙な色の選択で作品の品格が決まるほど大切な作業だと先生の指導があった。
板に直接鉛筆で寸法取り(墨付け)をして、バンドソウ(電動帯鋸)での切断の下準備に取りかかる。墨付け
バンドソウによる切断
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2004年11月6日(土)4日目
神代杉に墨付けをした厚紙(約36ミリ)の切断にとりかかっていった。
注意点としては、表板の部分と裏板の部分では多少木目が流れている場合もあるため、墨付けした線より全体に3ミリくらい大きめに切断しておく方が後に微調整がきくと指導があった。
切断したピースを木片に貼り付けたサンドペーパーで鉄定盤を使って角度の微調整をし、次におよそ36ミリのピースを3ミリ厚の部材に切断していった。
厚みにした部材を仮組みし、切断した部材をピース組みされた全ての部材に隙間がないか鉄定盤上で入念に確かめながら作業していった。
仮組みができた後、先生から接着剤として使うソクイ(ご飯粒と木工ボンド)の分量配分や練り方の指導が詳しく行われた。切り上がったピース部材
ソクイの準備
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2004年11月7日(日)5日目
先生から木画のピースの木口(厚みの部分)にソクイを指で付けて、前後にすり合わせる技法が紹介される。
木画のピースが組み上がり1枚の板になる。
次に、台木(木画のピースを貼り付ける板)にする神代杉の柾目板を3ミリから4ミリ厚に鉋で仕上げて、木画の板を台木との接着面を鉋で付きのよいように仕上げた。
エポキシボンドを木画の板と台木の両側にヘラで塗り、重石をかけて接着した。
先生から1年次の実習について講評を頂き終了になった。
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2005年11月5日(土)1日目
目違いを払う(木画の板の厚みをそろえるための鉋がけ)作業へと進む。
鋸を使って寸法に切っていく。 -
2005年11月6日(日)2日目
箱に組み上げていく下準備に入り、貼り付けた木画の板を図案寸法通りに鉋で微調整する。
寸法どおりになった板を留形隠蟻組(とめがたかくしありくみ)にするためのホゾの墨付け作業へと進んだ。箱の組み手を鑿や工夫した刃物で作業していく。
糊(ソクイ)しろを考えながら蟻組の微妙な調整を何回も繰りかえす。蟻組の調整
箱の仮組
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2005年11月7日(月)3日目
先生からソクイの硬さの指導がある。
手際よく進めないと糊が咬んでしまい付きが悪くなり隙間ができる。
ハタガネ(締め道具)等を使い、付きがいいようにしっかりと固めていく。
はみ出た糊を拭きとり、作業を丁寧に進めていく。 -
2005年11月8日(火)4日目
天板の裏打ち作業を終え、裏すきの作業へと進めていく。
先生による槍鉋を使っての裏すきの実演がある。
槍鉋は受講生には悪戦苦闘のように思えた。
裏すきは、甲盛りに仕上げた天板の厚みを均等にするために裏側をえぐる作業である。
サンドペーパー、木賊(とくさ)を使って、組み上がった箱の研磨作業へと進む。
次にイボタ、木蠟、密蠟を使って表面のコーティングを施して完成となった。槍鉋による裏すき
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2005年11月9日(水)5日目
全員の作品はおおよその形が出来上がったので、先生から講評を受ける。
1.奇をてらうのが強くなりすぎないようにすること。
2.視点が多すぎてアピールするところが分散しないようにすること。
3.常にオリジナルを創作し未知の世界へ挑戦していくこと。
先生をまじえ、全員でこの2年間の研修会で得たもの、勉強になったことや、感じたことを話し合い、先生にお礼を述べて終了となった。
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桑などの硬木を中心とするいわゆる江戸指物の系譜に連なる私は、中川先生の作品の持つ古の王朝人を思わせる優雅さや、しかもモダンでもある作風の因って来る原点をご教授いただきたいとかねがね願っていた。研修会は合計10日間に過ぎず、先生の作品制作の真髄を理解するにはあまりに短い。しかし、独自の技術の全てをオープンにして伝えようという先生の熱心なお気持ちが受講生にも伝わり、まさに熱気のこもった研修会となった。
受講生は、いつも伝統工芸展の会場で先生の木画作品を拝見し、「どうやって作るのだろう」と疑問に思っていた。細かい仕事には神代杉はあまりにも柔らかく脆すぎる。研修会はまずその技法の説明と先生による実演から始まった。それを拝見すれば「なるほどそうだったのか」と思うのだが果たして自分に出来るのかと不安がよぎる。しかし美しい貴重な神代杉を先生がご用意くださり、各自思うままに木画の構成を考え、箱を課題に制作に入った。受講生が戸惑っているとすかさず先生から的確な指導があり何とか木画の制作の一歩を始めたところで1年目が早くも終了。
各自木画部分を完成させて2年次が始まり、順調な者は箱が完成し、私のように遅れた者は完成の手前で宿題となった。
このように研修会を通じて木画技術をお教えいただいたことはもちろん貴重だったが、それと共に先生が折に触れてお話くださった、神代杉との出会いのお話や、実際に触れた最上の神代杉から受けた印象―まさに日本の美の伝統を端的に表現しているこの素材美こそ、木工藝の原点であるとの確信を得られたことも研修会に参加しての大きな収穫だった。さらに「和を以って貴しと為す」と先生はおっしゃったが、この言葉に独自でありながらも排他的ではない作風や、全てを伝えようという先生の強い意志の下、厳しいなかにも本当に和やかに進行した研修の秘密が隠されているように思われた。
参加者一同は「この研修会の受講生であることの自覚を持つように」との先生の言葉を胸に刻み、今後仕事に精進することを誓い各地に戻った。中川先生、本当にありがとうございました。
執筆者:研修会助手 疋田 達矢(木竹工部会)
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