活動報告
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2002年6月3日(月)1日目
前日には全員が読谷村に入り、工房を見学、玉那覇先生から研修についての説明を受けた。両面紅型は表と同様に裏面にも型を置いて染め上げるもので、先生の技法の真髄ともいうべきものを研修する事になりました。
先生から材料等の説明があり、生地は八重山上布を使用し、まずこれを板に貼りつける(地貼り)。型は先生お手持ちの型紙をお借りして、全員が同じ文様で型付けをする。糊は糯(もち)粉3小紋糠7塩少々を、2~3時間蒸して群青色をつけたもの。ヘラは各人が用意したが、先生はアクリル板を切ったものを使用されていて全員がそれを使わせて頂く。生地を1メートル程度に区分けして各人それぞれが型を置いていく。表の糊置きの後、型板ごと外に出して天日乾燥させるが、沖縄の空は晴れてすぐ乾く。乾いた布を板からはがしながら太い巻芯で巻き取り、裏面の糊置きに移る。型板の端にガラス板を置き、下からライトをあてて表側の文様ぴったりと型を合わせて置いていく。糊に群青色がついている為に文様がはっきりとわかり、しっかりと型を合わす事が出来る。糊置きが終わった布を張手にはり伸子を支って乾かす。その後豆汁(ごじる)とメイプルガムで作った溶液で両面地入れをして乾かす。地貼り
表面型付け
裏面型付け
地入れ
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2002年6月4日(火)2日目
配色を考えて色挿しをする。顔料は豆汁、泡盛、水で適当な濃度にして使用、色挿しは二度摺りで行うが、その1回目なのでうすめの顔料を表、裏と挿してゆく。
色挿し
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2002年6月5日(水)3日目
色挿しが終わった上に二度摺りにかかる。挿刷毛、摺刷毛を同時にもって顔料を挿した後、摺刷毛ですりこんでいく。濃淡などのぼかしもこの時にいれ、全体に色が挿し終わった後、黒を摺りこむ。
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2002年6月6日(木)4日目
隈取りに入る。型板の上に帆布を敷いてその上で二度摺りの時と同様に刷毛をもち、かなりの強さで摺りこんでいく。隈取りは紅型の特徴の1つで、二度摺りが済んだ1部にさらに濃色を加えて刷毛で摺りこみ、ぼかしをつくり輝きと透明感をあたえていく。この時に使用する摺刷毛の作り方を先生に見せて頂く。沖縄産の細い竹筒を適当な長さに切り、そこに髪の毛の束をテグスで引っ張り入れて刷毛とし、先を整えて使用する。すり切れるたびに竹の先を切って毛を整え短くなるまで使っていく。
隈取り
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2002年6月7日(金)5日目
隈取りが終わったら色止めのため明礬(みょうばん)を引き、乾かした後50分程蒸し(高圧の蒸気で色を定着させる)をする。すこし乾かした後、糊を落とすため水槽に入れる。糊をふやけさせている間に近くの読谷村花織組合の工房を見学させて頂いた。玉那覇工房に戻り、十分に糊がふやけたところで布をベニヤ板の上にのせ、シャワーをかけて糊をきれいに落としていく。青い糊が水に流れて図柄がくっきりと見えてきた時は感動的だ。水洗いの後は天日乾燥、濡れている布が乾いた部分から白場が輝く様に見えてきて美しい。出来上がった実習作品に先生から講評を頂いて1年次の研修を終えた。
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2003年5月13日(火)1日目
現在玉那覇工房で行われている工程を教えて頂きました。それは一度摺りの両面紅型です。
用意された型の中から各人別々の文様をお借りし、八重山上布に糊置きをする事となった。今回は各自用意したヘラを使用して型を置き、天日乾燥する。裏面はガラス板にのせて糊置きし、乾かした後、濃い目の地入れを両面にする。 -
2003年5月14日(水)2日目
色挿し。今回は一度摺りで行うため、顔料も前年より濃い目のもので摺り込んでいく。
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2003年5月15日(木)3日目
裏面の一度摺りを行う。表側の挿し色が薄く見えるので、そこに同色を挿していく。この時は表の顔料より2、3割うすめたものを使用する。
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2003年5月16日(金)4日目
次に隈取りに入る。隈で表現が決まる様に思えて慎重に進める。出来上がった布に明礬(みょうばん)を引き、30分程蒸しに入れる。
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2003年5月17日(土)5日目
蒸し上がった布を水洗いする。水槽に付けて置いた布をベニヤ板に置き、ふやけた糊をシャワーで落とした後、糊抜き剤を入れたぬるま湯に20~30分つけ、乾燥させる。十分に乾いた布を色止めの為にさらにライト・フィックスの溶液につけ張手にはって乾燥させる。
この間に読谷村歴史民俗資料館を訪れ、この風土が育んだ歴史資料や、展示されている先生の作品を鑑賞した。
工房に戻り乾いた完成布を並べて先生から講評を頂き、受講生から先生にそれぞれ感謝の言葉が述べられて2ヵ年にわたる研修を終了した。先生が長年研鑽を積んでこられた成果を惜しみなくお教え下さり、充実した10日間でした。水洗い (1)
水洗い (2)
講評
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沖縄での玉那覇有公先生による「紅型」伝承者養成研修会には、各地より6名が参加し、平成14年6月と15年5月に5日間づつ実施されました。梅雨の季節ではありましたが、比較的天候にも恵まれ、予定通りの日程で終了する事が出来、何よりほっと致しました。
読谷村瀬名波の高台に建つ玉那覇工房から見渡せる広々とした緑の砂糖黍畑と、残波岬の青い空と海は研修で疲れた眼をいつもやさしく癒してくれました。このように素晴らしい環境と新しい工房で研修させて頂き本当に幸せでた。1次、2年次とも5日間という時間的枠内で上布1メートル程に両面型付けをし、色挿し、二度摺り、隈どり、蒸し、水元など一連の工程はとても大変で、研修生一同もっと時間が欲しいと思いながら早朝から夕方まで充実した時を過ごしました。特に筆2本を同時に持って、挿しと摺り込みをする作業は、皆不慣れでなかなか上手くいかず指が痺れてしまいました。
色止めをし、糊を落して染め上がった八重山上布両面紅型の少裂は、隈どりの濃淡が美しく、苦労の思い出と共に、研修生の宝物となりました。いつも静かに見守り、時に厳しくご指導下さいました玉那覇先生本当に有難うございました。助手の玉那覇清先生、有勝先生にも心から御礼申し上げます。
首里の先生の工房では、舞踊衣装や、様々な紅型の染裂を前にお話を伺いました。
伝統的な琉球舞踊の会が盛んに催され、琉球独特の音楽もブームになっている現在、紅型を支える太いバックボーンが昔から今日まで脈々と受け継がれていると強く感じました。
2度と得難い貴重な体験をさせて頂き、又琉球の文化、芸術を学ぶ機会を与えて下さいました事に改めて感謝申し上げ、今後の制作に生かしていきたいと思います。
執筆者:研修会受講者 大村 禎一(染織部会)
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