「紬織」伝承者養成技術研修会(2015 - 2016 年)

佐々木苑子先生による重要無形文化財
「紬織」の研修会

活動報告

  • 2015年10月5日(月)1日目

    午前10時に研修生の皆さんが佐々木工房に集合。
    文化財保存事業委員の岩瀬なほみ先生が同席され、研修生の自己紹介から始まる。佐々木先生より「集中力を高めて絵絣紬の技を学び、この研修で目に見えた形に織り上げてほしい」等のご挨拶があり、研修スケジュールの説明後、実習に入る。
    各自、事前に描いてきた図案を先生に見て頂きながら、絵絣に適した図案について学ぶ。今回の研修は短期間でもあり、先生の図案帳を参考に、反転して4センチになる同じ花の図案を、各自がアレンジして使う事に決める。それぞれが方眼紙に描いた図案をチェックして頂き、渋紙の上に図案を刀でくり抜き、種糸用型紙ができ上がる。
    次に種糸作りに入る。絵図台の筬にカタン糸をかけ、型紙をその上に置いて、墨の付け方の手本を先生が示す。
    糸の張り方、手の動きなど細かな指導を受ける。
    この日の作業予定が済み、絣くくりを一人一人指導され、練習を重ねて初日を終わる。

    種糸台を前に種糸と型紙の説明

    種糸作りと墨付け

  • 2015年10月6日(火)2日目

    前日作った手本の種糸を、絵図台から小管に巻き取り、緯絣用製経台にかけてゆく工程を先生が行う。糸の張り具合を見極め、身体がぶれないように足腰を安定させるよう指導を受ける。次に研修生が種糸作りに入り、終わった人から絣用製経の練習をする。
    夜、懇親会を行う。研修の緊張からしばし離れ、交流の時を過ごす。

  • 2015年10月7日(水)3日目

    絵絣用緯糸の製経手順を確認後、順番を決め整経を始める。製経後、台からはずし、くくり台に巻き取る。巻き返しながら糸の張りを一定にする。
    くくり用ビニールテープを全員で裂く。
    先生から「五感で仕事を覚えるように」「もっと集中し、丁寧に仕事をするように」とのご注意があり終了する。

    絣くくり台に巻き取る

  • 2015年10月8日(木)4日目

    前日同様、絵絣用製経、巻き取り、巻き返しをする。終了後、くくり台6台を連ねて絣くくりを始める。終日全員が黙々と作業。

  • 2015年10月9日(金)5日目

    絣くくりの作業の続きから開始する。くくり終わった研修生から順に、糸染め用の綛上げをする。棒にかけて、腕で綛を回しながら張りを調節する。製経後に残った緯糸を地糸にするため、百回転ずつの小綛に巻き取る。午後の休憩時には研修生からの質問がいろいろあり、「五感を研ぎ澄まし、注意深く仕事を行う」という先生のお話を伺う。

    糸染め用の綛上げ

    綛の張りの調整

  • 2015年10月10日(土)6日目

    無事本年度の研修予定を終えて、今回の研修で使用した道具の後片付けを行う。昼食後、緯糸を木枠に巻く人、綛上げをする人に分かれ作業する。
    最後に来年度の打合せを等をして、1年目の研修会を終了する。

  • 2016年10月10日(月)・10月17日(月)1日目

    午前10時、研修生が1年ぶりに佐々木工房に集合する。
    2年次は藍染めの作業から始まるため、直ちに染め場に入る。
    本年度も文化財保存授業委員の岩瀬なほみ先生がお見えになり、染め場で見学される。
    前年度研修生がくくった絣糸と緯糸は事前に湯に浸けておいたので、軽くすすぎ、タオルに挟み、足で踏むことから開始する。
    糸をさばき、藍染液に浸け、濃度の確認をしながら、今度は3度浸け染めをする。
    くくりの境目がきちんと染まるよう、糸をタオルに挟み、足で踏む作業を行う。研修生は初めての体験でリズミカルに均等に踏む動作を習い、繰り返す。
    絣糸を傷めないようさばいた後、水が透明になるまで充分に水洗し、糸を脱水する。
    午後、縦糸を丁寧にさばき、次に糊付けとなる。たっぷりと付けた糊の量に研修生が驚き、質問する。「後で答えは解るわよ」と先生のお言葉を頂く。糸を干す。
    染めから糊付けまでの休みない作業をこなし、ハードな1日目が終了する。

    絣糸と緯糸の藍染め

  • 2016年10月11日(火)・10月18日(火)2日目

    乾いた絣糸の綛を終え、くくり台に巻き取る。繰り返して糊の付いた絣糸を伸ばす。絣糸まで切らぬよう注意して、くくったビニールひもを鋏で切り取る「絣ほどき」をする。終了後、絣糸を台から輪を作るようにはずし、一山の輪を作る。4本一束になっている絣糸を、1本ずつに分ける「絣かき」の先生の手本を皆で見学する。
    次に先生と組んで絣かきを順次行う。慣れない作業で糸の扱いの指導を受ける。また、「慣れない絣かきで手が糸に触れることが多くなるので、普段より多量の糊を付けたのよ」との前日の答えに、研修生が納得する。
    絣かき台に巻き取られた絣糸は小管に巻き取り、織る準備が整う。

  • 2016年10月12日(水)・10月19日(水)3日目

    前日と同じく絣かきを順番に行い、他の研修生は地糸を小管に巻く。同時に図案の確認をし、それぞれ二~三尺を目安にデザインを考える。
    経糸の準備(染め~整経~ちきり巻き~機かけ)は事前に工房で済ませ、紋織りも織れるよう完了しておく。
    緯糸の準備ができた研修生より、機に慣れるために無地の平織りをする。その後、絵絣の試織をする。花びらの図案が織り出されてくるのを見て研修生が感激する。

  • 2016年10月13日(木)・10月20日(木)4日目

    この日より本織りに入る。順番を決め、織る人、残りの絣糸の絣かきをする人、緯糸を小管に巻き取る人に分かれて作業をする。先生より、絵絣の柄を合わせる織り方、機を織るときの姿勢など指導を受ける。
    研修生は製織時間が限られているので、休憩時間も惜しみ仕事に向かう。

    機織り

  • 2016年10月14日(金)・10月21日(金)5日目

    前日と同じく、本織り、絣かき、緯糸巻きに分かれ、研修生の真剣な作業が続く。

  • 2016年10月15日(土)・10月22日(土)6日目

    本織り、絣かきが終わった研修生から片付けをする。
    先生が研修系からの質問を受けられ、「作品は最終的に技ではなく、全ての工程に心をこめて、見えない所に手を抜かずに行う。それが織り上がりの魅力になって最後に現れると思う」「日ごろから、細やかに手先を使う事を身につけると、仕事の深みが増し美しく仕上がる」等のお話しをなさる。
    時間ぎりぎりまで作業を行い、研修生全員が花びらのモチーフで絵絣を織り、紋織りの色使いの楽しみもプラスして、それぞれ織り上げた。
    研修生は最後に撮影インタビューに答えてすべての工程を終えた。
    2年次研修会は、機、道具の数、日数の都合上、2週に分かれ行い、研修生が一堂に会することはありませんでしたが、同様に進行して、無事終了致しました。

  • 研修生六名が各々に重責を感じながら、佐々木苑子先生の門を敲きました。静寂な工房内は、緊張感でいっぱいでした。先生からのお言葉をいただいた後、宿題の図案を見ていただきましたが、絵絣についての無知さを痛感いたしました。その後、先生の図案帳を拝見させていただき、参考にしながら四弁の花片を図案化し、型紙彫りに入りました。二日目・絵図台を使い糸の張りに注意しながら、絣の部分を青墨液で塗り潰し種糸づくりをしました。三日目・種糸を元に八十本の絵絣用の糸を整経しました。四日五日六日と絵絣用の絣くくり台を使い墨付けした部分をひたすらくくっていきました。初体験の作業や道具に四苦八苦しながら、一年次六日間を終えました。
    苑子先生は、五十年をかけてご研鑽されました絵絣の技術を、研修生に惜しみなく事細かくご指導下さいました。「糸が主役」ですと言われています様に、糸の命を大切にされて、常に研鑽に努められながら、厳しく正された仕事をされて、本当に美しい作品を生み出されていることを実感しました。
    二年次の初日・絣くくりしておいた糸と地糸とを斑無く藍染をしました。強力粉の糊付けをし干し上げました。ビニール紐で括った部分を解き、次の「絣かき」という作業では糸が大縺れしてしまい皆苦戦しましたが、先生の手にかかると不思議と糸が素直になり、解けてしまいました。管巻きの後、二尺の織布の中に絵絣と紋織とをデザインし、いよいよ織り始めました。見事に絵絣の合う物、花片が強風に乱れる者といろいろでしたが皆なんとか、織り上げました。毎日緊張の連続でしたが、休憩時間には、先生の貴重なお話しと温かいお茶をいただきうれしい時間でした。
    佐々木苑子先生をはじめ、助手の鈴木さん、川端さん、駒井さんには大変な前準備から、研修会での数々のご指導をいただきましたこと、また工芸会関係各位の皆様には、大変お世話になりました。深く心より感謝申し上げます。