
講師紹介
- 土屋 順紀
- つちや よしのり
- 重要無形文化財「紋紗」保持者
実施概要
- テーマ土屋順紀作品の源泉を探る
- 講師土屋 順紀
- 期間2022年10月21日(金)~22日(土)
- 会場わかくさ・プラザ、春日神社(岐阜県関市) 他
- 特別講師内田篤呉氏(MOA美術館館長)、正村美里氏(岐阜県美術館 副館長兼学芸部長)、小山弓弦葉氏(東京国立博物館 学芸研究部調査研究課工芸室長)
- 助手2名
- 受講者15名
実施報告
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2022年10月21日(金)
内田先生からは日本工芸会の設立の経緯と歴史、その目的についての講演があった。その中から伝統工芸の今日的意義、工芸会会員としてのあり方や役割など大切な教示をいただいた。
正村先生はまず「丹精を磨くことが大切」と述べられ、高度で安定的な技術と現代の意匠・作家性を合わせ持つ新しいものを創造することの重要性など、これからの伝統工芸についてお話があった。
土屋先生の講演は志村ふくみ先生、北村武資先生、上野リチ先生など師となる人との出会いから始まり、自分の目で見て自分で考えることが大切と思うようになったこと。工芸にとどまらず古典芸術から学び、美しいものを観ること、良い音楽を聴くことなどを通して自由自在な表現に変わってきたことなどのお話しがあった。受講者へ「既成概念から脱して、自由に伸び伸びと」という激励もいただいた。
講演の後、受講者は持参した作品などとともに自己紹介をし、質疑応答の時間を設けた。受講者の制作に対する考え方や悩みなどそれぞれの思いに対して、講師、講演者から丁寧な助言や教示があった。関鍛冶伝承館 刀鍛冶実演
新長谷寺 拝観
内田先生講演
正村先生講演
執筆者:研修会助手 宮入 映(染織部会)
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2022年10月22日(土)
午前は春日神社にて小山先生の講義とともに、重要文化財「能装束」を鑑賞。「縫箔」には今も美しい光沢を放つ練糸が用いられ、その華やかな意匠など特色ある室町〜安土桃山期の能装束を間近に鑑賞する貴重な機会となった。
午後の植物染の実習では5班に分かれて、朝方に採集した5種類の植物染料を用いてスカーフを染めた。特に染織部会以外の受講者は植物から得られる鮮明な色に感激したようだった。
研修セミナー終了後の受講者アンケートには「工芸会の存在意義を知り、現代的な造形感覚を養い新しい伝統を生み出したいと思った」「自分たちの生きている『今』が取り入れられながら伝統となっていくと感じた」「常に感性を磨き、心を自由にしておくことが大切だと感じた」「土屋先生が現在に至るまでの道のりを教えてくださり、次世代に向けた深い思いを感じた」「異なる分野の方々と交流できて、刺激を受け励みになった」等、意欲的な感想が寄せられた。
この2日間は土屋先生の作品の背景、それを支える豊かな風土や歴史に触れる貴重な時間でもあった。受講者相互の交流も生まれ、それぞれ創作活動への意識を深めたセミナーとなった。春日神社能装束特別鑑賞及び小山先生の講義
土屋先生講演
植物染の実習
執筆者:研修会助手 宮入 映(染織部会)
講師のひとこと
「美しいものを見て、美味しいものを食べ、良い音楽を聞けば、自ずと良いものが出来る。」私が高校生の時、初めて出会った日本画の先生の言葉です。感性を磨くということと思います。
この度の2日間のセミナーでは織の技術を伝えることは難しいと考えました。そこでまずは見て、体験して、何かを感じて頂ければと思いました。私の生まれ育った関市には歴史と文化が今に息づいております。関市教育委員会のお世話になりまして古式日本刀鍛錬の実演見学、室町時代の伽藍が残る新長谷寺の特別拝観、春日神社の桃山期の重要文化財能装束の拝観では東京国立博物館学芸研究部調査研究課工芸室長の小山弓弦葉先生の解説を伺いながら行いました。MOA美術館長の内田篤呉先生には「伝統工芸の歴史」、岐阜県美術館学芸副館長の正村美里先生には「これからの伝統工芸」の御講演を頂きまして、私からは「今考える伝統工芸等は何か」を伝えました。最後には、自分たちで採集した植物から色を染める体験をして自然の不思議と面白さを知ってもらいました。
この2日間を楽しく過ごし、何かを感じてもらえれば充分であり、何かが伝わったかと思います。他部会の人との交流も大切であると考えました。自分の感性を磨いて素晴らしい作品を制作されることを願っております。
実施スケジュール