人形人間国宝のわざ紹介

人形の歴史は古くは土偶や埴輪に始まり、やがてそれぞれの国や地域ごとの文化や特色を生かして伝わってきました。人形はもととなる形を作り衣装を着せ、顔を描くという工程で作られます。人形の体全体は桐の材木や、桐の粉と糊を混ぜた桐塑とよばれるねんど状のもの、和紙を何枚もはり合わせたもの、陶芸で使うねんどなどを原料につくられます。体となる部分が出来上がったら、胡粉を塗って表面を整え、布や紙を着せ、彩色して仕上げます。

衣裳人形いしょうにんぎょう

人体素地に仕立てた衣裳を着せる技法、またはその製品。衣裳人形は、木彫や桐塑(とうそ)(大鋸屑を生麩糊で練り上げた練物)に胡粉を塗って仕上げた頭、手、足に、胴は木または藁などでつくる。その人体に縮緬や金襴といった裂地で衣裳を縫製し、それを着せ付ける。江戸時代17世紀後期に人形用に模様を小さく織り出した織物を用いた有職雛や、人形用に染めた友禅染めの着物を着用した浮世風の女性形の人形も現れた。町方で発達した経済力を背景に贅を凝らした人形が制作されたため、江戸時代はしばしば禁令の対象となった。江戸末期から昭和にかけて流行した市松(いちまつ)人形も衣裳人形の一つである。

このわざの保持者

秋山 信子あきやま のぶこ

1996年保持者認定
木芯桐塑布紙貼「四天王寺聖霊会伝供」

桐塑人形とうそにんぎょう

桐塑の素材を用いて加工する技法、またはその製品。桐塑は、桐の木粉(もっぷん)と生麩糊(しょうふのり)で練りあげた素材で、練りあげた時は弾性と粘着性があって自由な造形できる。また一旦乾燥すると堅固にして木材同様に細かい彫刻が可能であることから細かい造形表現を特色とする素材となった。桐塑人形は、初めに木質の素材で人の形をつくり、その上に桐塑によって細かな肉付けをして、顔、手足、衣服の襞などを細かく形状を整える。その後に胡粉を塗り、和紙を貼り、布を貼って仕上げる。桐塑の特徴は人形に微妙な表情を与え、完成度の高い造形感覚を表現することができる。

このわざの保持者
撮影:越田昇

林 駒夫はやし こまお

2002年保持者認定
木芯桐塑紙貼「獅子 子」
  • 【出典】「伝統工芸ってなに?-見る・知る・楽しむガイドブックー」編:公益社団法人日本工芸会東日本支部、発行:美術書出版 株式会社 芸艸堂新規ウィンドウで開く
  • 「日本の人間国宝・伝統工芸」監修:公益社団法人日本工芸会、発行:上海世久非物質文化遺産保護基金会発行、協力:公益財団法人笹川平和財団笹川日中友好基金
  • 2023年3月31日時点の認定情報を元に掲載