「木工芸」伝承者養成技術研修会(2011 - 2012 年)

村山明先生による重要無形文化財
「木工芸」の研修会

講師紹介

  • 村山 明
  • むらやま あきら
  • 重要無形文化財「木工芸」保持者

<研修会について> 刳物(くりもの)は、立方体の板材を刳り削る事によって造られる器物の総称をいう。
制作図法の説明のあと、平面図を見て、いかに立体に組み直すかの練習であり、全体のバランスのとり方を確認するために、第1年次には、刳物の基本である隅切盆を造った。第2年次は自由制作とし、定形の板材での、各人のイメージの具体化に注目し、平面から思い起こす立体形への移行を重視し、刳物で出来る表現の可能性を追求した。

実施概要

  • 期間
    2011年12月4日~9日 /
    2012年10月21日~27日
  • 会場
    村山明氏自宅工房(京都、宇治)
  • 講師
    村山明
  • 助手
    2名
  • 受講者
    7名

実施スケジュール

2011年12月4日(日)
  • 研修の説明、欅材と道具の配布、砥石の説明と裏研ぎの実習、お盆制作の解説
2011年12月5日(月)
  • 道具の手入れ指導、丸鑿の研ぎの実演、丸鑿の使い方指導、お盆制作のための講義
2011年12月6日(火)
  • お盆の荒彫り、道具の説明
2011年12月7日(水)
  • 見込みの彫りの技術指導
2011年12月8日(木)
  • 外側の削り作業、底裏面の透き方・畳擦りの説明・素地ペーパーの当て方指導
2011年12月9日(金)
  • 課題作品の講評
2012年10月21日(日)
  • 拭漆の工程見本の手板制作の手順説明、研ぎの説明、刻苧(こくそ)作り
2012年10月22日(月)
  • 刻苧の扱い
2012年10月23日(火)
  • 手板の研ぎ指導、隅切盆の講評、錆付け
2012年10月24日(水)
  • 錆付け研ぎ指導、自由制作の荒彫り開始
2012年10月25日(木)
  • 水研ぎ指導と実技、荒彫り
2012年10月26日(金)
  • 炭粉の水研ぎ、素地作り
2012年10月27日(土)
  • 炭粉研ぎと摺り、作品の講評

講師のひとこと

初年度は形態の基本である「隅切盆」を制作してもらい、次年度は自由制作に移行しようと考えた。最初に製図法の説明を行い、そのまま彫りに入った。これは受講生が立体作品としての完成予想を把握していないと感じたからである。平面図を立体に変化させた時の差異を、各自に認識してもらいたい為に、敢えて製図のバランスの良否を注意せず制作に入った。
物造りは過去からの体験を通して、経験した事、想像する事、観る事(具体的なもの、具象、抽象、平面、立体を問わず)、聴く事(音楽すべて動くもののふれ合い)、触れる事、触れられる事(体験を通じてすべてを感じる事)等々が自己を通じて再現し得る立場にあると考えると、自分に表現できる巧緻な技術を持つ事は基本的な条件として精神(ふりがな:こころ)を如に表現するかに目を開けてほしい。
今、渾沌とした社会の流れの中での文化に於いて、工芸は現今の人類にとって「パンドラの箱」に閉じられ最後に残ったものを限りなく汲み出しえる手法であろう。このような大切な仕事に携われた事を一大事と思い、信念を持って制作を続けてほしい。