「志野」伝承者養成技術研修会(2005 - 2007 年)

鈴木藏先生による重要無形文化財
「志野」の研修会

講師紹介

  • 鈴木 藏
  • すずき おさむ
  • 重要無形文化財「志野」保持者

<研修会について> 「初心忘るべからず」。最初に取り組んだ時の心持ちや目的を忘れないことだとよくいわれていますが、原典の「花鏡」には3つの意味があるそうです。「是非、時々(じじ)、老後」の3つの初心を忘れるなと言っています。是非の初心、修行ときどきの緊張感、老いても初めてのことに取り組む意欲。この3つの初心を保てば、芸は一生涯向上するということだそうです。
それは、絶えず古典から学び教えられ研究することによってのみ可能であり、独自性と新鮮な表現からも自から出て来るものだと思っております。解りやすくいえば温故知新です。そこで、この伝承者養成研修会は古典の研究をコンセプトとしてすすめました。中国と日本の陶磁の名品による比較と、桃山陶(志野・織部)の産地と上方との比較が出来ました。ここで見たものは、向付が最も多く、この向付は和食器の嚆矢だとも考えられることから向付を作ることに決めて、使うことの大事さと難しさ、それと楽しさも学ぶことをテーマとしました。

実施概要

  • 期間
    2005年4月25日、10月26日、11月14日、11月29日 /
    2006年4月9日、6月22日、9月12日〜13日、10月26日、11月22日 /
    2007年1月25日、4月19日、4月30日、5月20日 (自主研修)
  • 会場
    1年次:愛知県陶磁資料館、京都市考古資料館、京都市埋蔵文化財研究所、東京国立博物館、土岐市美濃陶磁歴史館、土岐市内の古窯跡
    2年次:土岐市美濃焼伝統産業会館、鈴木藏アトリエ(岐阜県多治見市内)
  • 講師
    鈴木藏
  • 助手
    2名
  • 受講者
    10名

実施スケジュール

2005年4月25日(月)
  • 愛知県陶磁資料館特別展「桃山陶の華麗な世界」を見学
    初年度は博物館見学などをとおして、日本陶磁と中国陶磁の代表的なやきものの比較をし、日本を代表する桃山時代の美濃古陶を改めて見直すことを目的とする
2005年10月26日(水)
  • 京都市考古資料館および埋蔵文化財研究所において桃山陶の陶片を見学
2005年11月14日(月)
  • 東京国立博物館において研修会
2005年11月29日(火)
  • 高根山古窯群、久尻元屋敷窯跡を見学
    土岐市美濃陶磁歴史館を見学
2006年4月9日(日)
  • 研修会で向付制作の説明
2006年6月22日(木)
  • 向付の制作開始
2006年9月12日(火)
  • 向付の型起こし
2006年9月13日(水)
  • 向付の仕上げ方指導
2006年10月26日(木)
  • 講評、全員での作り直しの決定
2006年11月22日(水)
  • 再度型起こしに挑戦
    来年度、自主的に研修を行うことを決定
2007年1月25日(木)
  • 向付に絵付け
2007年4月19日(木)
  • 向付の釉掛けと本焼成
2007年4月30日(月)
  • 窯出しと講評
2007年5月20日(日)
  • 完成した器を実際に懐石の器として使用し、大きさの再確認と総評

講師のひとこと

この度の伝承者養成研修会は、受講生10名、助手2名で、第1年次は4日間、第2年次は6日間の2年計画ですすめて来ました。
この中で、2006年の10月26日に、それぞれの試作が出来上がって皆さんで検討いたしました。その結果もう一度挑戦することになって、しかも今後は自主参加でやろうということになりました。研修会、全員の熱意を感じましたが、この2年度中には終わります。
第1年次は、古典の研究で、特別企画展「桃山陶の華麗なる世界」展、中国と日本の名品を直に鑑賞、桃山から江戸初期にかけて焼かれた美濃古陶の消費地(京都)と産地での沢山の発掘資料、古窯跡及び当時の窯の様式など多くのことを学ぶことが出来ました。先生方々のご指導とご厚情によって僥倖に恵まれ千載一遇のチャンスでした。
2年次は、このことを参考として、向付を制作いたし、つかえるもの、つかう立場を考えることによって古典をより理解いたし、いかに明日につなげるかをテーマとしました。