「蒟醬」伝承者養成技術研修会(2001 - 2002 年)

太田儔先生による重要無形文化財
「蒟醬」の研修会

講師紹介

  • 太田 儔
  • おおおた ひとし
  • 重要無形文化財「蒟醬」保持者

<研修会について> 「広辞苑」「蒟醬塗」の語意に、「竹を組んだ素地に漆下地を施し、漆を塗り、これに文様を線彫りして彩漆を塗り込み、研ぎだして仕上げた塗り物。讃岐キンマ」とあります。
キンマは中国の南またはタイ、ビルマに起源があり、竹の豊富な地域でキンマの器も藍胎で作られたものが多い。
この藍胎づくりの基礎と布目彫蒟醬における基本的な混色(中間混合)について、制作工程全般の実習指導を行い、籃胎蒟醬のさらなる展開に資することを目標としました。

実施概要

  • 期間
    2001年11月26日〜30日 /
    2002年11月25日〜27日、12月9日、10日
  • 会場
    主に香川県漆芸研究所(高松市番町)
  • 講師
    太田儔
  • 助手
    1名
  • 受講者
    7名

実施スケジュール

2001年11月26日(月)
  • 研修主題は「藍胎蒟醬八角小箱」の制作でこの作品を作り上げることにより、藍胎と布目彫蒟醬の基礎技術を学ぶことを目的とする。
    木型制作
2001年11月27日(火)
  • 竹ヒゴ作り
2001年11月28日(水)
  • 網代手編み
2001年11月29日(木)
  • 籃胎構造の解説、籃胎成形 麦漆付け
2001年11月30日(金)
  • 籃胎成形 麻糸巻き上げ、下地、木型外し、黒漆塗り重ね
2002年11月25日(月)
  • 蒟醬の講義、1回目蒟醬彫り
2002年11月26日(火)
  • 布目彫り、高松市美術館「蒟醬 太田儔展」を鑑賞
2002年11月27日(水)
  • 1回目蒟醬色埋め、1回目炭研ぎ
2002年12月9日(月)
  • 2回目蒟醬彫り
2002年12月10日(火)
  • 2回目蒟醬色埋め、2回目炭研ぎ、仕上げ

講師のひとこと

この度の伝承者養成研修会では「素地から仕上りまで」という要請もあり、日程的には少し無理と思いながら「籃胎」「布目彫蒟醬」を計画しました。案の定、仕上工程は家庭研修という中途半端な研修会となりました。木型を作る木工技術、竹ひごを造り籠に編む竹工技術、籃胎独特の漆下地法、それに蒟醬は布目彫、1つ1つの技術は単純でも一貫した作業になるとかなりの抵抗があったようです。しかし籃胎蒟醬の技術工程の大要は理解して頂けたと思っています。
籃胎は縄文時代既に使われていますが、古事記(海神宮訪問神話)にも「天間勝間まなしかつま」とあり「まなし」とは「目の無い」の意、「かたま」とは「目の細かな籠の意」即ち、目の細かな籠に更に、漆で編目を塞いだもので籃胎の古語と思われます。火遠理命ほをりのみこと(山幸彦)は水を透さない籃胎の籠舟に乗って海神(わたつみのかみ) を訪問したことになります。
竹は物差しに使われているように、温度や湿度による変化が少なく、軽く、丈夫で編目も美しい、これからも漆器の素地として充分活用できる素材と思われます。