「友禅」伝承者養成技術研修会(2022 - 2023 年)

二塚長生先生による重要無形文化財
「友禅」の研修会

講師紹介

  • 二塚 長生
  • ふたつか おさお
  • 重要無形文化財「友禅」保持者

<研修会について> 友禅染の技法が確立する江戸時代中期、「流行」の時代背景に即応しながら優美で繊細な絵模様の友禅小袖は全盛を極める。小袖形式は江戸期の服飾の特徴であり、今日においても表現形式を変えながら続いている。
友禅染の技法の中でも糸目糊置きは友禅の骨格と言われるように、重要な役割を担っている。故に研修会では敢えて糯糊を使用して、課題に応じながら糸目糊置きの体験をひたすら実践する事とした。

実施概要

  • 期間
    2022年10月3日~8日 /
    2023年8月21日~26日
  • 会場
    石川県立美術館 広坂別館 多目的室
  • 講師
    二塚長生
  • 助手
    2名
  • 受講者
    5名

実施スケジュール

2022年10月3日(月)
  • 1. 研修生の自己紹介兼ねた作品プレゼンテーション
    2. デザイン研究会 研修生の雛形図案を指導
    3. 今年度の実習内容の説明
    4. 下図作り 113.4×34.2㎝の紙に1.8㎝の間隔で17本の線を書き入れる
2022年10月4日(火)
  • 1. 117×35㎝の牛首紬帯裂地の布面に下図を青花紙の液で写し取り113.4㎝の張り台に巻き取りながら張る
    2. 石川県立美術館 寺川和子氏講義「友禅 日本の模様染」
    3. 石川県立美術館所蔵作品6点熟覧(寺川和子氏解説)
    4. 国立工芸館所蔵作品5点熟覧(今井陽子氏解説)
2022年10月5日(水)
  • 1. 先金の口作り作業 先金の口先を削り調節して柿渋の糊筒に取り付ける
    2. 糯糊の硬さや粘り・筒の絞り出し方についての説明 調整の指導
    3. 糸目糊置き実習 100㎝の長さで約107本の線を置くため1.8㎝の幅に5本の線を糊置きするための試し→制作にかかる
2022年10月6日(木)
  • 1. 糯糊の調整の指導
    2. 糸目糊置き実習制作
2022年10月7日(金)
  • 1. 糯糊の調整の指導
    2. 糸目糊置き実習制作 → ほぼ制作終了
2022年10月8日(土)
  • 1. 修正作業 糊置きされた布面をみて途切れている線の箇所に糊を置き補修する
    2. 石川県立美術館「加賀宝生のすべて 能面と能装束」鑑賞
    3. 研修生実習作の総評
    4. 糊置きされた布地を持ち帰っての作業の説明(地入れ・地染め・水元など)
    5. 次年度の作業の説明(課題:帯の図案作成)
    6. 講師の帯作品・江戸期の友禅染古裂地・木村雨山作掛軸 熟覧
2023年8月21日(月)
  • 1. 今年度の実習内容の説明
    2. 昨年糊置きした作品に地入れ・地染め・水元したものの講評
    3. 帯の図案の指導
    4. 下図写し
2023年8月22日(火)
  • 1. 下図写し
    2. 糯糊の調整の指導
    3. 帯の前側部分の糊置き
    4. 落款の位置・先金の取り扱いの指導
2023年8月23日(水)
  • 1. 糯糊の調整の指導
    2. 帯のお太鼓側部分の糊置き
2023年8月24日(木)
  • 1. 糯糊の調整の指導
    2. 帯のお太鼓側部分の糊置き
2023年8月25日(金)
  • 1. 糯糊の調整の指導
    2. 糸目糊置き実習制作 → ほぼ制作終了
    3. 試し用の小布に糊置き
    4. 講師・二塚長生の記録DVDを鑑賞
2023年8月26日(土)
  • 1. 研修生実習作の総評
    2. 講師の着物作品2点の熟覧
    3. 糊置きされた帯を持ち帰っての作業の説明(地入れ・地染め・水元など) 

講師のひとこと

友禅染を行なうには多くの工程を経る。又技法を必要とする。その技法の1つ「糸目糊置き」は基本的でありながらも重要な役割を担っている。
研修会では、できる限り若い会員の方に参加していただき、古来から使われてきた糯粉を主原料にした糯糊で糸目糊置きを体験してもらう事とした。布地一面に均一に柿渋の筒に入れた糊をしぼり出しながら線を置いていくことを課題とし、使用する糊の調子と程良い状態の在り方、糊置き時の気分等を助言して開始。研修生は限られた時間内で線と線の間を一定に保ちながら只進める作業に苦戦ではあったが、集中力を切らさず何とか成し遂げ得ることが出来、1年次を終える。
2年次は自分のデザインした模様の帯地に糊置きを実践する。その中で線の生かし方の努力が見て取れ、思ったより成果を感じた。
染め上がるまで労を費やした緊張感こそが常に考える大事な要素になるかと思う。