「無名異焼」伝承者養成技術研修会(2018 - 2019 年)

伊藤赤水先生による重要無形文化財
「無名異焼」の研修会

活動報告

  • 2018年11月6日(火)1日目

    11月6日10時から6日間、新潟交通ビル6階の会場を借り研修生5名で伝承者養成研修会が開始されました。今回の研修生5名の所属支部はばらばらでしたが、面識のある研修生もいたようで、わきあいあいとした雰囲気の中、まず会場準備をし、その後自己紹介、伊藤赤水から、研修の進め方、道具の使い方についての説明があり、その中には佐渡という環境からなぜ無名異焼が始まったのかという、無名異焼の歴史的背景、地理的背景の説明もありました。
    今回は練上の講座ということで、まず、事前に準備をしておいた3種類の色土(白、赤、黒)を使い講座が進められました。まず皿や鉢といった平物の制作から始められました。
    ①3種類の土の中から白と赤、白と黒という組み合わせで、それぞれ2種類の土の割合を変えた約10種類の色土(約200g)を作ってよく混ぜる。
    ②その混ぜた土を長方形のブロック状にする
    ~3日目に続く~

    3色の土の調合

  • 2018年11月7日(水)2日目

    マイクロバスで佐渡の歴史、地理を勉強。
    二見海岸→佐渡金山→真野御陵→宿根木集落の見学。

  • 2018年11月8日(木)3日目

    ~1日目の続き~
    ③ブロック状にした約10種類の土の塊を、たたら板で薄く切る。
    ④その薄く切った約10種類のたたらを、1種類目から順に泥を糊代わりに重ねて張り合わせていく。
    ⑤グラデーション状に出来上がった土の塊を側面部が上下になるように方向を変え、たたら板で薄く切る。
    ⑥薄く切ったたたらを、三角形になるように伸ばす。

  • 2018年11月9日(金)4日目

    ⑦三角形に切ったたたらを点が中心になるように円形状にし、泥を接着剤代わりに張り合わせていく。
    ⑧手でたたいてよく締める。
    ⑨円形状にしたたたらを素焼き型に入れる。
    ⑩口の処理をし乾燥を待つ。

  • 2018年11月10日(土)5日目

    ⑪カンナを使って内側外側とも表面を削る。
    ①~⑪の繰り返し。

    皿の削り(外側)

    皿の削り(内側)

  • 2018年11月11日(日)6日目

    ①~⑪の繰り返し。
    伊藤赤水作品館を見学。
    1年目の反省、2年目に向けての説明。

  • 第1年次終了

    5人の研修生ともに3~4個の作品を制作しましたが、練上の最大の難関である切れるという事が何作品かに見られました。模様を乱さないようにしっかり締めるという矛盾する作業が大変だったように思います。一つ目より二つ目、二つ目より三つ目と、一つにかかる時間もだんだん少なくなり、模様の乱れもなくなってきたように感じられました。
    今回始業時間は9時、終了時間は17時の予定でしたが、皆さん毎日会場を借りることのできるぎりぎりの8時30分から18時まで一生懸命制作に励んでいました

  • 2019年11月6日(水)1日目

    1年目と同じく11月6日から6日間、新潟交通ビル6階の会場を使い研修が始まりました。練上技法では焼成という工程は特別な何かをするわけではないので、1年目終了後十分乾燥させた後、伊藤赤水工房の窯を使い、作品を焼成しました。その完成した作品を伊藤赤水が講評し、それを参考に2年目は立体作品の練上の作品制作が始まりました。

  • 2019年11月7日(木)~10日(日)2~5日目

    ①1年目と同じく、色土を少量ずつ混ぜグラデーション状のたたらを制作。
    ②グラデーション状にしたたたらを、それぞれの研修生が用意した筒状の素焼き型に巻き付ける。型を抜いた後、巻き付けた筒状のたたらの底に円形の平たくした土をくっつける。
    ③口の部分を形が乱れないようにすぼませる。
    ④口の処理をし、乾燥を待つ。
    ⑤乾燥後表面を削る。
    ①から⑤の繰り返し

    土の組み合わせ

    型抜き

  • 2019年11月11日(月)6日目

    ①から⑤の繰り返し。
    作品を見ながら講評。研修生の感想。

    形を整える

    口作り

  • 第2年次終了

    伊藤赤水の考えでは、1年目は中心に向かってのストライプの皿や鉢、2年目はストライプの花入や壺、という作品が頭にあったようで、それに合わせたサイズの素焼き型の準備を各研修生にお願いしてありましたが、1年目は練上の基本的な形の平物、2年目は少し応用的な形の立体物、という抽象的な説明をしていたため、それぞれの研修生がその予想を超える水指や急須などの制作を目指しており、型と目指す作品の大きさや形などに乖離が生じたように感じます。
    今回1年目2年目ともに6日間という練上作品を作るにしては短すぎる日程だったため、やや強引に制作を進めざるを得ない工程があり、ヒビや切れといったトラブルが多数生じました。また、乾燥を待たなければ削りができず、乾燥を待つ間に同時進行で違う作品を制作しなければ時間が無駄になるという難しい問題もありました。一つの作品を仕上げてから新しく違う作品に取り組めるという時間があれば、また違った種類の作品が多数生まれたのではないでしょうか。もちろん今回の研修会は練上の基本的な制作を習得するための研修であり、いろいろな種類の作品を多数制作するという目的ではありませんが、遠方からきた研修生にとっては、少しの時間も無駄にはしないという意気込みの表れだったと思います。また、一から手取り足取り教えるという方式ではなく、ヒントを与えつつそれぞれの研修生が試行錯誤を重ねながら自由に制作するという方式だったため、十人十色の作品が生まれました。陶芸作品は土づくりから始まり、成形、乾燥、焼成、と時間がかかる仕事のため、その中のごく一部を短時間で行わなければいけないという研修生にとっては相当駆け足的な時間だったのではないでしょうか。
    練上という技法は成形しつつ同時に紋様も生まれるという特殊な技法のため、今回参加された研修生は普段自分が制作している作品とは違った面白さがあったようです。最後の反省会で、ある研修生が「陶芸の楽しさを久しぶりに思い出した」と言っていた事が印象的でした。制作の中で、オリジナリティーの大事さ、形へのシビアさなど、練上といった技法を超えた話もありました。
    今回の研修生は色々な産地で活躍されている方々でしたので、私自身各産地によっての口作りの感覚の違い、形の感覚の違いを感じるとともに、今回は具体的な制作の指示がほとんどなかったためか、それぞれの研修生が普段作っている作品がベースにあり、出来上がった作品にもその特徴が色濃く出ていたことが大変興味深く、その他多くの事が大変勉強になりました

  • この度の研修会は伊藤赤水先生ご指導の下、無名異焼の練上技法を学べる貴重な機会ということで、参加させていただきました。
    第1年次は各自、研修に用いる鉢状の素焼き型を制作し持参しました。先生の方からは佐渡で採れる土を三色(赤、黒、白)ご用意いただき、量りで計量しながら土を混ぜ込んでいきました。色の粘土を組み合わせてグラデーションのピースを作成し、円状に貼り合わせ、持参してきた素焼きの型に打ち込み成型しました。乾燥の状況や貼り付け具合に問題があったのか、ひび割れを起こす作品が続出し、練上技法の難しさを痛感しました。
    また研修2日目には、佐渡金山の遺跡や宿根木地区、正方寺などを観光バスにて巡りました。佐渡金山の脇には無形異坑と呼ばれる洞窟があり、無名異焼に使用される粘土はここでしか採れないこと、佐渡金山を稼働する上で副産物として粘土が採れたことなどを知り、佐渡の繁栄とともに発展した焼き物の歴史を学ぶことが出来ました。
    第2年次は背の高い作品を制作するということで、円柱状の型を各自持参し研修に臨みました。練上げ文様を施し円柱状に成型した粘土の胴を膨らませたり、口元をすぼませることで、無機質だった文様がおのずと変化していくところがとても印象的でした。
    研修中の伊藤先生は、個性をいかに表現するかということを重点的にお話してくださり、我々の過去作品を参考にしながら指導をして下さったのがとても心に残っています。
    五人の研修参加者は支部も年齢も異なっていましたが、初めての技法に苦労しつつ、お互いの創意工夫を交流しながら温かい雰囲気の中、研修に挑むことが出来ました。
    伊藤赤水先生をはじめ指導助手の伊藤栄傑先生、若林善一先生、教室を提供してくださり、様々なお心遣いを頂きました佐渡交通様、日本工芸会様及び今回の研修会の関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。