
講師紹介
- 室瀬 和美
- むろせ かずみ
- 重要無形文化財「蒔絵」保持者
実施概要
- テーマ人に学ぶ、物に学ぶ、自然に学ぶ
- 講師室瀬 和美
- 期間2021年3月20日(土)~21日(日)
- 会場MOA美術館
- 特別講師内田篤呉氏(MOA美術館館長)、高波博之氏(あずさ監査法人理事長)、佐藤真久氏(東京都市大学大学院 環境情報学研究科教授)
- 助手2名
- 受講者28名
実施報告
-
2021年3月20日(土)
内田氏からは「工芸会の設立」の経緯から歴史、「美術と工芸」、「工芸と自然」についての講演があり、高波氏はご自身が工芸に興味を持ったきっかけから、伝統工芸の価値評価の現状と問題点、その要因の分析をされた後、これから仕事をするにあたっての根本的な示唆に富むお話があった。佐藤氏は「持続可能な開発目標(SDGs)」の講義から始まり、この時代に活かせる工芸文化と情報の発信や連携の必要性について、室瀬講師からは、漆、蒔絵の素材の特質や歴史、ひいては「ものをつくる」ということについての講演があった。
内田館長による講義
高波氏による講義
佐藤先生による講義
執筆者:研修会助手 奥井 美奈(漆芸部会)
-
2021年3月21日(日)
午前中の実習では、手板に蒔絵筆で線描き及び地塗り筆で面塗りをして、金粉を蒔きぼかした。午後からは、3グループに分かれてMOA美術館所蔵品(重要文化財「山水人物蒔絵手箱」)は内田館長が、講師作品2点については講師、助手が解説にあたって質問を受けながら熟覧をした。
2日とも既定のプログラムを終了した後、受講者は持参した作品とともに自己紹介をし、必ず質問をするという時間が設けられた。質問は講演の内容から具体的な材料、技法に関するもの、制作に対する考え方や悩みなど多岐にわたるものだったが、講演者、講師から丁寧な答えがあり、白熱した意見交換がされた。
後日提出された受講者のアンケートでは、「工芸会の成り立ちから現在までのお話は知らないことが多くあり、会に所属する作家としての考え方を強く持つ良い機会となった」「美術・経済・SDGsの各講演を聞いて、自分の立ち位置を再確認できた」「今後の制作活動の原動力になります」「コロナ禍の中で自分の仕事への不安があったが吹っ切れた」等の感想が寄せられた。分野もキャリアも違う受講者だが、それぞれに今後の創作活動に向けて得たものが大きかったことが伺えた。また、工芸会に対することも含めて様々な形での実習、研修などの要望が寄せられた。蒔絵実習
作品の熟覧
白熱した質疑応答
執筆者:研修会助手 奥井 美奈(漆芸部会)
講師のひとこと
毎年、文化庁の国庫補助事業により日本工芸会が行ってきた「重要無形文化財伝承者養成研修会」では、制作実績のある作家を対象として「技術研修会」を行ってきました。そこで文化庁に要望して令和2年度より、別枠でより幅広く若手から中堅作家が参加できる研鑽の機会と次世代育成推進をめざす「研修セミナー」新設をお願いして、今回の企画が実現しました。
第1回の研修セミナーは、この企画を文化庁に要望した私が講師になりました。1年以上続いたコロナ禍ではありました(現在も続いています)が、多くの参加希望者があり実施できたことに喜びと安堵を感じています。今回のセミナーは専門分野だけを対象とせず、各分野に幅広く声を掛けることも新たな試みでした。研修生のコメントを読ませて頂き、実施して良かったと改めて感じております。
今回は私の専門とする蒔絵を知り体験する事はもちろんですが、工芸の理論と日本工芸会の意義を知ることから始まり、伝統工芸作家としての活動の重要性と社会との繋がりを学び、次世代の日本工芸会で活動していく原動力を養う事を目的としました。
今年度はすでに今泉今右衛門先生のセミナーが決まっていますが、来年度以降も各分野の先生に講師になって頂き、毎年継続していきたいと思います。また、研修生から出た要望の1つとして「対象が50歳以下となっているが、せめて55歳以下に広げてほしい」という声もあり、来年度から実現できればと考えています。是非、多くの方々に参加して頂き、次世代の伝統工芸作家として工芸会を支えて頂きたいと願っています。
実施スケジュール