「沈金」伝承者養成技術研修会(2017 - 2018 年)

前史雄先生による重要無形文化財
「沈金」の研修会

講師紹介

提供:石川県輪島漆芸研修所
  • 前 史雄
  • まえ ふみお
  • 重要無形文化財「沈金」保持者

<研修会について> 沈金は中国で鎗金とよび、宋から明初にかけて盛んに行われていた。我が国には室町時代に伝わり、石川県輪島では江戸初期に始まり、沈金技法が発達した。今回の研修会は、これまで父・前大峰より習得した沈金技法を教える事として、第1年次は各種沈金鑿の彫法を習熟、第2年次は小箱に各自デザインの加飾で完成する。この研修会での経験は、今後の創作活動に役立ち、作品に生かされ更なる展開につながって行くと思う。

研修会映像記録(ダイジェスト)

本編は約30分。DVD(4,400円)またはBlu-ray(6,600円)にて頒布中です。
詳細は、日本工芸会事務局までご連絡ください。
主催:公益社団法人日本工芸会(TEL:03-3828-9789)

実施概要

  • 期間
    2017年11月13日~18日 /
    2018年11月12日~17日
  • 会場
    石川県立輪島漆芸技術研修所
  • 講師
    前史雄
  • 助手
    2名
  • 受講者
    6名

実施スケジュール

2017年11月13日(月)
    • 前先生と助手の先生方の紹介、受講生の自己紹介、施設利用の説明。沈金用具、沈金についての説明。
    • 沈金刀技法の練習①:塗板への線彫り、点彫り植物図案(シノブ等)の置目を取る
2017年11月14日(火)
  • 沈金刀技法の練習②:線彫り、点彫りの練習、シノブの置目を塗板に転写して彫りの練習
2017年11月15日(水)
  • 沈金刀技法の練習③:線彫り、点彫りの基本練習の継続、置目した図案の練習の継続、輪島の沈金の歴史についての説明。
2017年11月16日(木)
  • 沈金刀技法の練習④:サクラ、ナデシコ、スイセンの花の細かな点彫り表現等の練習、こすり彫りの説明と練習、次年度の課題となる箱の展開図や置目紙の準備。
2017年11月17日(金)
  • 色入れの練習:花の仕上げ後、初めての色入れ(金粉と青粉を使用した粉入れ)の練習。授業終了後、受講生及び関係者の交流会。
2017年11月18日(土)
  • 色入れと仕上げ:1年次最後となるランの図案の塗板を彫り終え、前日に引き続き粉入れを行い仕上げ。前史雄先生、前大峰先生の制作工程の上映と説明、作品制作への助言。受講生には今回仕上げた塗板や練習手板を持ち帰り、展開図を基に図案と仕上げ方など次年度の箱制作課題を準備するよう宿題が出される。
2018年11月12日(月)
  • 課題 箱の制作、受講生が考えてきた図案と仕上げ方について前先生より指導と助言を受け置目に準備作業に入る。練習用の塗板に図案を転写し彫り方等を確認する。
2018年11月13日(火)
  • 練習用の塗板での確認作業、箱の彫りの作業を開始
2018年11月14日(水)
  • 箱の彫りの作業、研修所講堂にて研修所所蔵の前大峰先生と前史雄先生の作品を特別観覧
2018年11月15日(木)
  • 箱の彫りの作業、前先生主催の交流会の実施
2018年11月16日(金)
  • 箱の彫りの作業、箔の粉入れを施す受講生もでてきて、完成に向けて一層集中力が高まる。(今回は図案に応じ、金・青金・白金の消粉を用いる)
2018年11月17日(土)
  • 前先生、助手の先生方のご指導と助言を頂きながら、彫りと粉入れを行いついに全員の作品を完成し、2年間の研修が無事終了となった。

講師のひとこと

この度、沈金伝承者研修会は受講生六名が二年間の計画で行い、当初、一次二次合わせて十二日間をどのような研修内容にするか、指導計画を立て、まず沈金加飾の作品一点完成することを目標とした。
第一次は沈金刀(鑿)の習熟に徹し、基礎技術とその手さばきを習得させる。
第二次は一次で習得した核技術を十分に活用して、宿題にしていた同案をもとに漆塗り小箱(十六センチ×十二センチ×八・三センチ)に沈金加飾をして仕上げることを課題とした。
沈金は熟達した鑿捌きが必要で、各種鑿の特性と、その表現によって彫り方を選んで取り掛かる。自由な発想でまとめた図案をもとに、作者の想いを大切に、的確な彫りの技法を選びながら黙々と沈金小箱に取り組んだ。
漆芸加飾の中の一技法だがこの講習会は大変意義があったと思う。助手、手伝いの方々に感謝し、受講生皆さんの一層の発展を念じます。