「髹漆」伝承者養成技術研修会(2019 - 2020 年)

大西勲先生による重要無形文化財
「髹漆」の研修会

講師紹介

  • 大西 勲
  • おおにし いさお
  • 重要無形文化財「髹漆」保持者

正倉院宝物「漆胡瓶」が薄板の巻き上げ、輪積みによるものではないかと言われている。薄い板を曲げて造形する木地製法は日本でも古くから存在する。曲輪造の素地はより狂いのない工夫考案された方法である。私はこの曲輪造を赤地友哉に師事し引き継いだ。今回の研修会では曲輪素地を重点的に第1年次は板から曲輪に、第2年次は曲輪の下地。木材と道具の利点欠点を見極める力を持つよう伝えた。今後の創作活動に役立ててもらいたい。

研修会映像記録(ダイジェスト)

実施概要

  • 期間
    2019年11月18日~23日 / 
    2020年11月16日~21日
  • 会場
    大西勲工房(茨城県筑西市)
  • 講師
    大西勲
  • 助手
    2名
  • 受講者
    5名

実施スケジュール

    2019年11月18日(月)
    • 自己紹介、道具を渡す。 尺貫法、木のアク抜き、曲輪定規の話し。木材の見立て、木取り。 罫引きを使って檜の板を割る。鉋で削る。
    2019年11月19日(火)
    • 檜の板の厚さ罫引きで決める。罫引きで決めた厚さの所まで鉋で削る。 鉋の台の直し方・定規の調節と使い方。 檜の板を鉋で削る順番
    2019年11月20日(水)
    • 檜の板を曲輪の寸法に切る。 寸法の出し方。 胴付き鋸で引く。マチ(接着部分)を鉋で削る
    2019年11月21日(木)
    • 一晩お湯に漬けた檜の板をコロ(曲げる道具)で曲げる。 日光で干し、マチを1時間ごとに入れかえる。竹バサミを竹を削って作る
    2019年11月22日(金)
    • 乾いた曲輪を調整、続飯で付ける。 ご飯粒を竹ベラでつぶし練った糊の続飯を作る。 昨日作った竹バサミを使い接着部分を固定する。糊の乾いた曲輪を本体にはめてみる。 きつい、ゆるい。 糊の出た所を小刀で切る。鉋をかける。内側のマチを削る。 マチに糊が付いていない物、スキ間がある物はお湯で煮てはがす。のり漆で曲輪を接着。 たたいてはめ込む。
    2019年11月23日(土)
    • 昨日本体にはめた曲輪をはずして外側の形をデザインする。 鉋で削る、 木屎彫り。木屎の作り方、 来年までの課題の説明
    2020年11月16日(月)
    • 昨年の課題の提出、曲輪木地の確認。.大西先生への質疑応答の時間。刻苧を金剛砥石で磨く。十文字作り。輪の内側にはめ込んで使う、曲輪を塗る時に必要な道具。曲輪中心部(ミツケ)と外側を接着する
    2020年11月17日(火)
    • 布着せ。3つのパーツに分かれた曲輪にバイアスに裁断した麻布を、竹ベラを使い、パーツごとに糊漆で布着せする。
    2020年11月18日(水)
    • 布ぞろい。乾いた布着せ部分のハミ出た麻布を小刀で切る。金剛砥石で磨いてから残りの部分を布着せする。両面の布着せを終える
    2020年11月19日(木)
    • 布ぞろい。金剛砥石で磨き。布目摺り。
    2020年11月20日(金)
    • 錆付け。関東平野の乾燥のため、錆が乾かず、本物のお風呂場で乾かすことになった。お湯を沸かし暖房をかけ温度と湿度を調整して乾かす。乾かない理由を皆で考える
    2020年11月21日(土)
    • 錆を砥石で空研ぎ。(研修会での最終工程)駿河炭の切り方。くくり錆。キリコ下地の付け方。ヘラ作り。仕上げまでの塗りの工程の説明。受講生の研修会の感想。

講師のひとこと

今回参加した受講生は、漆芸の作家の方々ではありますが、木材の加工は不慣れの様でした。1年次の木地制作では鉋や罫引きなどを使いますが、道具とは買って直ぐには使えないため、作業は私の道具で行うことになりました。2年次の下地は、色々な原因はありますが、皆、手が遅く漆がなかなか乾かないという事態もあり、工程が進まなく苦慮しました。素材・道具・工程の利点欠点を自分が納得行くまでよく考え、失敗することが大切なのです。如何に経験を積むかが一番の問題なのかも知れません。
私は今、仕上がった作品が正解だとは考えません。100年200年先に答えが出るのだと思います。時代に逆行しているかも知れないが、修業とは精神力・忍耐力を養うものであった。受講生には、物を作るという初心を忘れずに制作に励んでもらいたいものです。
2年次のコロナ禍の中で研修会を無事行うことが出来たこと、関係者の皆様、改めて御礼申し上げます。