- 陶芸
丹波灰釉掛分陶筥
- たんばかいゆうかけわけとうばこ
- 西端 正
- にしはたただし
- 第36回日本伝統工芸展(平成元年度)
日本工芸会総裁賞
- 受賞総評丹波焼といえば伝統の焼締め陶という認識が一般にあるが、丹波には江戸初期以来施釉陶の歴史もあり、江戸初期には小堀遠州の好みを受け入れた優れた茶陶が焼かれていた。このたびの作品は、茶の湯の器として作られたか否かは判らないが、丹波焼の伝統を踏まえつつ、現代丹波焼の施釉陶として洗練されたものを作りあげた。これみよがしに技法を見せようとするものではなく、掛分けられた釉のハーモニーもいかにも地味であるが、どこか観る者の心をとらえる美しさがある。また筥の形も平凡でありながら、すみずみまで行き届いた配慮があって、手取りの重さがこの種の蓋物として、当然のことながら実に手頃であった。現代工芸はもはや「用即美」の理念から逸脱しつつあるが、久しぶりの落ち着きのある「用即美」の器にやはり共感を抱いた。