受賞総評

鉄地の本体に、金と銀の布目象嵌技法で椿の文様を配した匣である。小振りの花だが、気が満ち今まさに開かんとする勢いを感じる。金の粒は匣の内側の立上りをカシメる（固定する）と共に、四隅の金と相まって無限に広がる空間を効果的に引きしめている。作者の意図と感性が融け合って表現された精神性の高い優品である。題名「離れ」は花が開花する様を矢が弓から放たれる姿に例えた。（桂盛仁）