• 諸工芸
  • 砥草文七宝花瓶

  • 田村 幸夫
  • たむら ゆきお
  • 第20回伝統工芸諸工芸展(平成17年度)
    日本工芸会賞
  • 受賞総評
    題材は群生する砥草であるが、特に春と秋に現れる若芽を取りあげた。その変化のある曲線を三角形の構図にまとめ、筒形の花瓶にすっきりと調和させた。砥草の茎に銀泥を用い、節は銀箔で強調しているが、背景の黒地に半透明の銀色が神秘的に溶けこむ。線描には通常の薄い銀線とともに作者独自の太い銀線を使って抑揚のリズムをきざむ。従来の七宝の花瓶には内側に凹むのが使われていたが、作者は逆に四方にふくらませ、上端の覆輪も自ら作り、きりっと器形を引きしめた。黒地に銀一色と色数も手数も少ないが、作者の熟達した力量で印象ぶかく、気品のある作品に昇華させている。
  1. 公益社団法人 日本工芸会